「近未来金融システム創造プログラム」(第4期)へのお誘い
‐新たな時代の金融システムの担い手を育てる‐

 ごあいさつ

金融は新たな転換期を迎えようとしています。プレゼンテーション2

資本主義経済の血流ともいうべき「お金」を経済システムの中で循環させる役割を担う金融は、グローバル化を伴いながら拡大し、実体経済を支える「脇役」から、実体経済を超えてその行方を左右する巨大な存在となり、幾多のバブルとその崩壊・危機、それを追いかける規制の強化というサイクルを乗り越えて、むしろその存在感を強めてきました。それは、2008年から09年に起きたサブプライム危機と米大手金融リーマンブラザーズの破たん後の世界においても変わりません。金融は、常に時代の最先端の頭脳を魅了し、彼らのテクノロジーを取り込み、米ソ冷戦の終結に伴う国防分野のロケットサイエンティストのウォール街進出によるデリバティブや証券化商品市場の拡大、そして近年ではFintechと呼ばれる世界的潮流の中で、AI(人工知能)やビッグデータ、ブロックチェーン、電子決済の高度化や仮想通貨の広範な活用など、数々の技術革新の成果を取り込んでますます人々の暮らしに深く浸透しながら、巨大化し、複雑化し、人類にとっていわば天使と悪魔の両方の顔を見せ始めつつあります。

ところが、その重要性にもかかわらず、そうした金融を高度なレベルで学び、社会の仕組みをデザインしたり、事業を構築したりするなど具体的なアクションに結び付けられる武器を身につけられる教育の場は、わが国ではこれまで提供されてきませんでした。これが、これまでのわが国の金融における国際競争力の相対的弱さの背景の一つとして挙げられます。

本プログラムでは、過去から現在にいたる金融の全体像を理解し、遠い将来でなく近未来の金融市場・金融システムを形づくり、支えるであろう最先端の科学的知見と応用技術、それらを使いこなし、人々の暮らしに役立てるための規制やベストプラクティスなどの取り組み、そこに横たわる諸課題について、それぞれの分野を代表する科学者・ポリシーメイカー・起業家などとともに考えることを通じ、様々な分野でこれからの金融システムを創造し主導していく次世代人材を育成することを狙いとし、これまで3年間の取り組みを行なってきました。

その意味で、理学・工学分野において世界的に高い評価を得ている、東京大学という舞台はその狙いにふさわしい学びと思考の場であると考えています。講師には、各分野で最先端を開拓し、現実にディールをドライブしている日本を代表する研究者・官僚・実務家を起用し、それぞれの分野における「知の格闘」の空気に触れる機会を提供し、講師・受講者相互または受講者間のネットワーキング形成にも資する枠組みを取り入れています。さいわい、第1期は東京大学をはじめとする大学・大学院から世界的金融機関・コンサルティングファーム、中央官庁の若手から中堅幹部、ジャーナリズムなどを含む約80人の受講生を得て、その取り組みは成功裏に終わったと考えています。同時に、修了生のネットワーク「近未来金融研究会」も発足しました。第2期・第3期では、人工知能・AI分野を中心にプログラムを大幅に拡充し、受講生からのフィードバックも踏まえて、新年度のプログラムも大幅に見直し、新しい金融のリターンについて議論を掘り下げる試みも盛り込みました。「近未来金融研究会」の活動もいよいよ活発になり、メンバー主導での合宿(増上寺合宿)や特別講座などの活動も開催されました。そして、第4期となる2020年度から、当プログラムでは、これまでとは異次元の新しい挑戦を行うことにしました。それは、東京大学大学院工学系研究科で始まる科目「システム創成学特別演習4C 近未来金融システムの創成(特別演習)」(全13回)にこれまで蓄積した「近未来金融システム創造プログラム」の経験とノウハウを投入して、工学系の学生が本分野の最先端の知識を学び積極的に討論することのバックアップを行うことです。新年度(第4期)の新たな参加者及び第1期から第3期のプログラム修了生の中から選ばれた近未来金融研究会幹事の皆さんは、13回にわたる「特別演習」に「指定討論者」もしくは「指定質問者」として参加する候補者となり、東京大学の講義に積極的に貢献することが期待されています。それに値する能力・意欲を評価して参加者の選抜を行います。なお、当プログラム独自のセッションを「特別演習の外」で2回程度行います。こちらには、「特別演習」の受講生がゲストとして(任意で)参加することを推奨する予定です。当プログラムでは、従来から単なる受け身の聴講に止まらない積極的な参加を求めてきましたが、今期はさらに一歩前に進む決意と能力を持った参加者を募りたいと思います。また、今期は講義の提供形態を全面的にオンライン化します。これは大きな変化ですが、変化の中からしかイノベーションは生まれません。
COVID-19(新型コロナ)の影響は世界中に広がっていますが、われわれはそれを新しいチャレンジの契機としたいと思います。それが「近未来金融システム創造プログラム」のスピリットです。以上を十分理解された上で、本プログラムに挑戦されることを期待しています。

(2020年4月)